☆この曲はの一ノ瀬さんの『Silent Interval 2』という曲です。 |
手の物語!仕事の関係でお世話になっているSさんが住宅模型を見て、「模型なんか造ってくれるんですか?」って吃驚(びっくり)していた。自宅に来る度に、「ひも付き(建築条件付)の土地を買っちゃったんで、言われるままに建ててしまったんですよね。」と言っている。家造りに後悔しているのだろうか。もっとよく考えればよかったというのはOさん。南側に広く開口部を設けたモダンな家に住んでいるが、どうもあまり満足していない御様子。完成した時の満足感が生活を始めてから、しだいに萎えていったようだ。「引っ越ししたのが冬だったから良かったんだけど、夏になったら暑くて堪らないのよ。だからカーテンを閉めてエアコンをつけているんだよ。ほらっ、“家は夏をむねに・・・。”っていうのがあったじゃん。分かってはいたんだけどねぇ。」と苦笑い。確かに吉田兼好は徒然草の中で、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ、わろき住居は堪へがたき事なり。【住まいは、夏のことを考えて造るのがよい。冬ならばどんなところでも住もうと思えば住めるからである。暑い時に、造りの悪い家は我慢ならない】」と住居について述べている。高温多湿の日本の夏、しかも地球は温暖化でますます熱くなっているから、兼好法師のおっしゃる事は現代でも十分通用する。奏庵(自宅)だって軒を深く出して“夏をむねに”しているもの。ここに『手の物語』というパンフレットがある。これは小池一三さんが作ったもの。小池さんの名前は結構有名なんだけど、知らない人のために簡単に説明すると、OMソーラー協会を立ち上げた人だ。 (本当に簡単な説明になってしまったが・・・。)OMソーラーとは、屋根に降り注ぐ太陽の熱で空気を温め、床から室内を暖めたり、お湯を採ったり、換気したりするシステム。(詳しいことを知りたい方は、OMソーラー協会のHPをご覧ください。)奏庵もこのシステムを取り入れ、寒い冬にも陽だまりのような、仄々(ほのぼの)とした暖かさを享受している。小池さんは、このシステムを全国の工務店との間のネットワークを通して普及してきた。だけど単にシステムだけを販売してきた訳ではない。このシステムを住宅に組み込むことで可能になった住環境をより良いものとするために、住宅の要(かなめ)である設計力の向上も図ろうとした。 OMソーラーシステムを組み込むことで、「より設計が自由になった。」と所長は言う。たとえば広い吹き抜け空間、間仕切りのない暮らし等、広々とした居住空間の構築が可能になったのだ。しかしこのシステムに共感した工務店が、協会や外部の建築家に依頼してこのシステムを導入したモデルハウスを建てても、自社の設計スタッフではその住宅を見学して依頼してきてくれるお客さんに対し、適切に対応することが出来なかった。当時の地方工務店の設計水準はお世辞にも高いとは言えなかったのだ。まあそういう設計をした経験がないということもあったし、設計というものに対する考え方も画一的だった。そこでOM技術の開発や設計力の向上のために設立したOM研究所の建築家の人達とのネットワークにより、設計スクールを開催したり、OM地域建築賞を設けて地方工務店の設計水準の向上を図ってきた。 昨年一線を退き、小池創作所を設立。今までの経験を生かし、地方の工務店の後方支援に乗り出した。そして出来上がったのが、ばんだい東洋建設のパンフレットだ。パンフレットといっても小雑誌ぐらいのボリュームがあって内容も充実しているので、これから家造りを考えている人にはお奨めしたい。住宅雑誌を1冊購入して読んだぐらいの読み応えがあり、とても参考になる冊子だと思う。先日家造りの相談に来たAご夫妻にも貸してあげたところ、「急いで建てたい。」と言っていたのに、「やっぱり、じっくり考えて建てようと思います。」と180℃考え方が変わってしまった。土地が決まるまではの〜んびり構えていた建て主も、いざ土地が決まると急に焦り始める。“早く建てたい”“早く住みたい”と気ばかり焦るようだ。でもねぇ、急いで建てたって満足できなければ意味がない。大方の人にとって家って一生もの。家造りに失敗しないためにも、じっくり納得のいくものにしたほうがいいと思う。 |
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