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村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

お問い合わせはTEL.053-478-0538

〒432-8002 静岡県浜松市中区富塚町1933-1

 ☆この曲は作曲家・須釜俊一さんの『天使の休日』という曲です。 
  
  

 木材の価格

 改まって言う必要はないだろうが、日本の住宅は木造で建てられている。私だって長年そんな住宅に住んできた(今は違うけど)。だけどまったくといっていいほど木材についての知識がなかった。まあ興味もなかった。建築関係者以外、特に関心もない事柄だろう。でも所長の設計した家を見学するにつけ、木の家っていいなあという想いが強くなった。自然素材にこだわって、その素材感を大切にした家が醸しだす木の香り、木肌のぬくもり、木の感触は私に心地よさを与えてくれる。何故なのかは分からないが精神的な安定感をも与えてくれるように思う。それに無垢の木を使っていることでの安心感もある。今住んでいるマンションは壁も天井も白いクロスが貼られている。建具(ドア等)は塗装がかけられていて、どんな材料が使ってあるのか分からない。業者の良心を信じるしかない。

 建築に使われる木もいろいろあるが、最近では『地元の木を使って家を建てる運動』なるものが盛んになっていて、この辺りでは天龍杉が使われているようだ。国内産の杉のなかには北山杉・秋田杉・吉野杉というようなブランド杉なるものもある。どの世界でもブランドというものは幅を利かせているようだ。いやいや私はブランドを否定しているわけではない。私だってブランド品を持っている。デザイン性で優れていると思うし、しっかり作ってあるので長持ちだ。(さもしいと言われるかもしれないけど、もとをとっている。)人によってブランド品を持つ理由も様々だとは思うけど、そこにはブランド品に対する信頼もあるのではないだろうか。京都や秋田や奈良の森林できちんと育てられてきたという、素性に対する信頼は大きいのかな。だけど価格が心配になるのも人情ってもの。ましてや木材の建築費に占める割合は大きいのだ。

 木材の価格は、木の種類によっても異なるし、国内産、外国産によっても異なる。同じ国内産でも産地によって異なっている。またそれらの木を伐採し、木材として製材する過程(住宅で使用するために角材・板などにする過程)で生じた価値によっても異なるようだ。一般に住宅で使用する木材は一等材もしくは特一等材と呼ばれるもので、比較的安価だが節が目立つ。気にならない方には特に問題はないのだけれど、お客さんによってはとても気にする方もいる。そんな場合は、節があるけれども小さい小節や上小節、もしくは節がない無節を使用する。だけど一般材に比べると数倍もしくは十数倍と高価になってしまう。また木目の模様も木材の価格に大きな影響を与えている。木を年輪に直角に製材すると、木の年輪が縦模様になって現れる。この面を『柾目(まさめ)』という。年輪に沿って製材するとこの年輪はタケノコ状の模様になる。この面を『板目(いため)』という。どちらの模様を好むかはそれぞれの好みによって分かれるところだが、柾目の木材は板の両面の収縮差が小さく、狂いが僅かであるという長所と、板目の材に比べ製材するうえで作業効率が悪く(材料に無駄がでる)、幅の広い材料が取りにくいということで希少価値になっている。

 もちろん国内需要とか伐採の時期なども価格を決定する要因にはなっているようだが、木材の流通は複雑で私にはわからない。だけど木材に対する目だけは肥えてしまった。すぐれた建築を見続けているうちに良質な木材によって構築された空間の美しさを知ってしまったのだ。まさに『門前の小僧、習わぬ経を読む』という感じかなぁ。私のこだわりはとても贅沢なものになってしまったようだ。(誰か、誰か私をとめてくれないだろうか!)私は数奇屋の空間、その上品な静けさを愛しているがその実現は難しい。事務所のカタログに載っている数奇屋の材料は非常に高価なのだ。『数奇屋とは、もともと茶室から生まれた建築様式で、自然の素材を生かした簡素な作りの中に、味わい深い美しさを感じることができます。』って説明書に書いてあるのに・・・。数奇屋はいつの間にか庶民レベルをはるかに超えてしまったようだ。悲しい。
   
 
 

 最近人気のエコ製品

 建材(建築で使用する材料)を扱っている会社はたくさんあり、日々研究が進められているようで、新製品が続々と登場している。所長はそういう情報を集めるために常にアンテナを伸ばし、チェックしている。本当にまめで、仕事のためというより単に好きなのではないかなあと思ってしまう。毎月送られてくる建築雑誌に目を通し、やたらと資料請求をしている。おかげで事務所は収拾がつかない状態になってしまい、昨年新しい棚を購入し整理をしたのはいいけれど、もはや事務所のなかには置き場はなく、しかたがないので今は廊下に置いている。必然的に廊下の広さは半分になってしまった。

 そんな事務所のなかは所長の木へのこだわりのため、木材見本もごろごろしている。無垢(本物)の木の種類別の見本に始まり、国内産の材料の見本、外国産の材料の見本、そして産地別に異なる見本がある。そのうえ合板見本も揃っている。所長にしてもお客さんにしても無垢(本物)の木を使いたいという気持ちは同じなんだけど、予算の都合でどうしても使えない場合がある。そんな場合は合板を使う。合板とは、読んで字のごとく薄く削った薄板(単版・ベニヤ板)を木目が互いに直交するように接着剤で張り合わせた板なんだけど、この接着剤がシックハウス症候群の原因になることがあるので、慎重に選ばなければならない。最近ではこの問題に敏感に対応している会社も増えてきている。

 年に何回か東京の有明にある国際展示場(ビッグサイト)で建築の展示会が開催される。一般によく名前の知られた大企業から比較的小規模な個人商店までと出展は幅広く、意外な掘り出し物があったりするので、新しい情報を求めて出来る限り足を運ぶようにしている。新しく開発された製品や技術を見てまわるのは結構楽しい。アンケートに答えるとお土産をくれたりするのでそれも楽しみのひとつ。一般のお客さんでも入場することが出来るようなので、家を新築しようと考えている人達も多く訪れている。最近設けられるようになったエココーナーは人気で、そんな人々の興味を誘っているようだ。だけど、ビッグサイトってとても広い会場なので、1日で見て廻ろうと思うととても大変。最初は意欲的に見ていても、しだいに疲れてきて(特に足が痛くなる)気力も減退し、椅子に座っていることが多くなる。計画していた半分ぐらいしか見ることが出来ない。私は隣接した場所に足ツボマッサージのお店があったらいいのにといつも思ってしまう。絶対繁盛すると思う。

 このように村松事務所では、常に新しい情報を収集するようにして、快適に暮らすために最低限の性能を維持する観点から材料を求め仕上げを考えている。最近の健康ブームのためそのような材料が多く市場に出てきていて、選択の幅が広がり嬉しい限りである。また、建築施工の会社自らが新しい製品を開発したりもしている。北海道の小松建設は、今年ホタテの貝殻を使った塗り壁材を開発した。小松社長は北海道で多く水揚げされるホタテの貝殻が、ただ捨てられるだけだったのを見て、何とかできないものかと思ったそうだ。そういう自然の材料は、いいなあ。身体にも優しい気がする。これからは地球の資源を無駄にすることなく、リサイクルをして大事に使っていく時代なんだと思う。

追伸
北海道、伊達市の小松社長は、建設会社の社長という顔とは別にもうひとつの顔を持っています。実は北海道では知らない人はいないというほど有名な『手風琴』というグループのボーカルなのです。今年新たに『おやG』というCDを発売、意欲的に活動をしています。この『おやG』というCDからは、その題名からはとても想像できない懐かしいサウンドが流れてきました。カラオケ好きで、同じくカラオケ好きの所長とカラオケボックスで唄い合い点数を競い合っています。
  
  

八ヶ岳音楽堂

 連日の猛暑に食傷気味だったので、少しでも涼しいところに行って体を休めたいという切なる想いと、八ヶ岳音楽堂を見たいという想いが重なりこの夏は八ヶ岳に行った。ちょうどお盆の帰省ラッシュの頃だったので、東名の牧之原ぐらいから徐々に混みだし、『この先まだ長いのにいきなり渋滞かあ。先が思いやられるなあ。』と思ったが、清水を過ぎた辺りからなんとなく流れだした。その後は割と順調に進んだが、やはり清里に入る手前頃からまたもや渋滞。皆考えることは同じなんだなあと清里の人並みを見てどっと疲れを感じる。なんとか清里を抜けると道路沿いに設置されている温度計は21℃を示している。アーもうこれだけで気分的に涼しくなる。私にとって視覚的な要素って大きい。車の窓を開けると心地のよい風が流れ込んでくる。これよ、これ、やっぱり高原はこれでなくっちゃ。建築家フランクロイド・ライトのように夏の間の仕事は事務所ごと引っ越したいものだ。でもそんなことはこの先あるとは思えないけど・・・。

 
八ヶ岳音楽堂とは説明書には、『標高1500メートル。八ヶ岳連峰、南アルプス、秩父連山に抱かれた250人だけの音楽空間。日本建築様式の木造六角堂、回廊つきの建物で木の響きを生かし、音質を追求した音楽専用ホール。自然とその環境に見事に調和した建築作品として評価され、毎日藝術賞を受けた。』と書かれている。建築家吉村順三さんの晩年の力作であり、以前から見学してみたい建物のひとつだった。翌日、八ヶ岳ロッジのそばに建っている八ヶ岳音楽堂を訪ねた。入り口ドアの右側にずらっ並べられている椅子に座ってみる。この椅子は吉村さん自身がデザインして作らせたもので、とても座りごこちがいい。目の前には横長の一枚ガラスの窓が嵌め込まれていて、八ヶ岳の風景を堪能することが出来た。吉村さんの空間はなんとなくほっとする。どこか所長の空間に似ている気がする。吉村さんファンの所長は、吉村さんの軽井沢の別荘が印刷されているTシャツを好んできているのだ。以前訪ねた軽井沢の別荘が思い出された。

 
軽井沢の別荘は、周囲の環境と不思議と調和していた。この建物があることが不自然ではなく、この建物があることで、より森が森らしく存在しているというか。うまく説明が出来ないので、建築家中村好文さんの言葉を借りるならば、『奇異に聞こえるかもしれませんが、この山荘の場合、建物が建ったことで取り巻いている自然の豊かさがいっそう際立ち、その魅力は倍加したといえるでしょう。山荘が建つ前はただの木々の自生しているいわゆる山に過ぎなかったのに、山荘が建てられ、そこにアプローチの小路などが付けられたことで傾斜地という変化のある地形の魅力が明らかになり、森には深い奥行きと新しい表情が加わったのです。』(藝術新潮)という感じ。小鳥を観察するために2階にリビングを設けて窓の位置を決めたと聞いたが、そんな風に自然に則して設計されているからかもしれない。

 この日の夜リサイタルがあるらしく、ホールの中ではその練習が行われていた。ホールの見学は無理みたいだったので、そ〜と外側から回り込んで覗いて見た。すると驚いたことに八ヶ岳の自然の風景が私の目の中に飛び込み、演奏者が浮き上がって見えた。まるで森の中で演奏会が行われているようだった。この六角形をしたホールはガラス戸に囲まれていて、なんと舞台の向こう側にもガラスの戸が嵌め込まれていたのだ。なんでこんな小さな音楽堂にブーニンはじめ多くの著名な音楽家が来るのか不思議だったが、成る程と納得した。とても素敵なホール。八ヶ岳の自然をありのままに受け入れた、まさにこの土地にあるべきして生まれた音楽堂だなあと思った。
 
 

 根気のある人達

 真剣な眼差しで所長がTVにむかっている。「やっぱり、韓国は強いよ。」これは、6月に開催されたワールドカップサッカーを観戦中の科白ではない。FIFA2002 ロード・ツゥー・FIFAワールドカップ、つまりサッカーゲームをしている時の科白。何を隠そう所長は、大のゲーム好き。若かりし頃、ゲーム大会で優勝した実績を持つ。そういえば以前からプレステの前を通るとな〜んか物欲しげな顔をしていた。「最近のゲームって高いよねえ」と言う私の言葉を耳にして我慢していたようだ。後継機種のプレステ2は、ゲームも出来て、DVDも見ることが出来る。なんかとってもお得な気がしてついに私も購入を決断した。その日から所長は今年6月のワールドカップを目指し、毎日練習を積んでいた。何でワールドカップを目指し、練習しなければならなかったのか、今でも分からないが、30分で飽きてしまう私とは違い、何時間でもTVに向かっていた。

 事務所スタッフも皆ゲーム好き。女性スタッフの山田は、ゲームに夢中になりすぎて明け方近くまで起きていることもあるという。フ〜ン、皆さん根気があるなあ。まあね、設計って根気の要る仕事だから。一般に映像化された設計事務所のイメージとはずいぶん異なっていて、毎日机に向かい、図面と格闘する日々。どちらかというと地味な部類ではないでしょうか。現場は汚れるので、常にジーパンとTシャツというラフな格好をしています。採用面接の時、スーツ姿でやや緊張した面持ちで現れた大林は、ハウスメーカーに勤めていた経験をもっているのですが、今ではそんなサラリーマンだった面影はまったくありません。

 最近、面接依頼のメールが届いたりします。不景気な時代なので、学生さんも必死なのでしょうか。その気持ちはとっても嬉しいのですが、今のところ新たな採用を考えてはいないので、皆さんに良い返事をしてあげられません。採用の予定がある場合は、近況報告で募集をするようにしているので、チェックしていただければと思います。以前スタッフの募集をした折、何人かの人達が応募してきてくれましたが、なかにはちょっと理解を超える方もいらっしゃいました。経歴を見ても建築の勉強をした形跡がどこにもない。もちろん建築士の免許も持っていないのです。だけど面接をしてみると、「何でもやりますから、ぜひ雇ってください」とやる気満々。一体何をやってくれるつもりだったのかな。

 いい機会なので、村松事務所で求めているスタッフについて述べさせていただくと、所長は建築の経験を積まれた方より若い感性を好んでいるようです。私は経験を積んだ人のほうが、仕事も分かっていて、即戦力になるからいいのではと思うのですが、一概にそうとは言い切れないようなのです。たとえば、企画商品の設計や部分的な設計に長い間携わってしまうと頭が固くなってしまい、自由な発想が出来なくなってしまうことがあるようなのです。所長は発想力をとても大事にしているのです。そして経験ならば建築の勉強、特に製図の訓練を受けた人を希望します。以前働いてくれたスタッフのなかに、仕事に対する行き詰まりから内面のイライラを抑えることが出来なくなってしまった人がいました。彼女は大学卒業後に建築に目覚め、専門学校で建築を学んでいました。勉強期間は短かったのですが、建築に対する熱意をかって働きにきてもらったのです。当初は意欲に燃えて頑張っていたのですが、仕事に対する要求の高い所長は、彼女がひく図面になかなかOKをださない。いくら考えても首を縦に振らない所長を前に、彼女は考えることをやめてしまったのです。こんなケースは、お互いにとってあまり好ましくありません。今働いてくれているスタッフは、基礎訓練を充分に積んでいて、とても勉強熱心。所長も仕事がやり易いようです。

追伸
以前いただいたアンケートのなかに、事務所の様子を紹介してほしいというご意見がありましたので、夏休みの前日に事務所の様子を撮ってみました。
右から2番目が所長の村松。真剣な眼差しで色見本の検討中。下を向いてしまい、残念ながら顔がよく見えません。左から2番目はサッカー大好き人間大林。夏休みにはジュビロ磐田の応援のため、柏レイソルの本拠地、柏の葉スタジアムまで観戦に行ったようです。ちなみに私はTVで観戦しました。右端はボディーボードが趣味の山田。夏休み明けには一段と黒さを増していました。エキゾチックな容貌のため、よく英語で話しかけられるようです。左端は勉強に来ていた新村君。なんだか少し照れているようです。
 
 

2世帯住宅

 設計事務所に依頼してくるお客さんのパターンは大きく分けて3つに分けられます。
ご主人の方が家づくりに興味があって、奥さんは割と無関心といったケース、また、奥さんがすごく張り切っていて、メーカーにまで自らカタログを請求し集めてしまい、ご主人はそんな奥さんを見守っているケース、そして3つめはご主人、奥さん共に熱心に研究されているケースです。住宅見学に行っても、興味津々、あちらこちらから矢継ぎ早に質問が浴びせられる。所長はそんな反応が嬉しいみたいです。

 
最近なぜか2世帯住宅の依頼が多いのです。建替えの時期なのでしようか。それにしても2世帯住宅って結構大変。親世帯と子世帯の好みが異なる場合が多いのです。たとえば外観。親世帯の希望するものと、子世帯の希望とは180度違っていたりします。両者の希望をそのままかなえると、とってもちぐはぐな家になってしまうので、どちらかの意見に統一していただくのですが、育ってきた時代背景、考え方、価値観等が違うのだから一致するわけがありません。そのうえ、親世帯のご夫婦、子世帯のご夫婦がそれぞれ主張を述べていく、そんなケースだとなかなか方針が決まらないのです。

 それに費用の問題もあります。共有部分が多い2世帯住宅の場合はまだいいのですが、完全2世帯住宅、つまり玄関もリビングもキッチンもお風呂もすべて2セット必要な住宅になると、2軒分の家を新築する場合と同じぐらいの費用がかかってしまうのです。そして建替えの場合、今住んでいる住居を解体しなければなりません。当然その費用も必要になります。予算に余裕がなく、ぎりぎりで建替えを希望しているご家族にとっては結構厳しい現実です。そこで家の坪数を削ることを提案をするのですが、それもなかなか難しいのです。多くの人は今まで自分の住んでいる家を基準にして建替えを考えているので、広い家に住んでいた方は、それと同程度もしくはより広い家に住みたがる傾向があります。先日打合せをしたお客さんのお父さんも『広い家がいいなあ〜。』と明るい声で希望していました。でも日常生活するスペースって結構限られていて、そんなに広さを必要としないのではないでしょうか。それに部屋数ばかり多くてもかえって掃除が大変になるだけではないのかなって私は思ってしまうのですが・・・。

 
建築家、中村好文氏は、『たとえば、「とにかく12畳の居間が欲しい」とか具体的な要望を出されると困るんです。部屋の広さというのは間取り全体のバランスで決めるものだし何よりイメージをふくらませて健康的なアイデアを駆使する余地、つまりプロの腕の見せどころがなくなっちゃう。それより「中村さん、居間は広い感じになるといいなあ」なんて耳元でささやかれる方がね、建築家としては燃えます。天井を高くしたり、開口部を大きく取ったり、たとえば8畳しかなくたって12畳の部屋より広く、豊かに見せる工夫はいろいろあるわけだから』と芸術新潮の中で述べていました。所長も、同じような事を常々言っています。私自身も住宅を見学した時、4.5畳の和室(空間)がとっても広々と感じられたことがありました。設計による工夫によって、実際には狭い空間を広く感じさせることは可能なようです。家の大きさ(坪数)や部屋数にこだわるよりも、広く感じることの出来る空間、開放的な空間にこだわってみませんか。
   
   

  心地のよい空間

 大人になってから習い始めたピアノも、ずいぶんと上達したようで(自分でそう思っているだけなのですが)、今では難しいベートーヴェンやモーツアルトの曲を練習させてもらえるようになりました。たくさんの音符が書き込まれている楽譜を前に、音楽家(作曲家)ってすごいなあって思います。自分の音楽の世界を五線譜のなかに表現できるんだから。私なんか楽譜を見ただけではどんな音楽なのかぜ〜んぜん分からない。演奏されて始めて、こんな音楽だったんだなんて感動するのです。建築の場合も同様、建築家(設計士)は、自分達の構築した建物(世界)を図面に書き込んでいく。家の外観、内部空間、風の流れ、日の入り方そして人の動線等、彼らの頭の中ですでに家は完成しているのです。でもそんな図面を前にしてお客さんの反応は鈍い。模型を作って一緒に持っていってはいるのだけど、本当のところは理解できていない。それって空間が分からないからなんだろうと思う。図面だけでは空間が想像できないのだ。だから住宅が出来上がって初めて、こうなるんですねえと感心する。住んでみて初めて、その心地よさを理解するのです。

 先日、打ち合わせ中のお客様を『陽光の家』に案内しました。基本プランを提案した折、図面とともに模型も見せて家についての説明をしたのですが、いまいち理解できてない様子だったので、少しでも参考にしていただければと案内したのです。久しぶりにお会いした『陽光の家』のYさんは、家の打ち合わせをしている時から明るい奥様ではあったけど、より一層明るく健康的になったみたいだったよと所長が話してくれました。所長の設計した家にとっても満足していて、見学しているご家族に自ら進んで家の良さを説明してくださったようです。そのおかげで、「こんないい家に住めるんだったら、一日でも早く住みたいものだ。」とおとうさんは大乗り気。帰りの車中ではご満悦状態だったそうです。

 これから家を新築しようと思っている方は、建築雑誌を買い込んでいろいろ研究されていることでしょうが、もしその 雑誌を見て良いなあと思ったら、その建築家が設計した住宅を探して行ってみることをお奨めします。やはり写真だけではよく分からないことが多いので、現地に赴いて実際の空間を感じることが大事です。建築家によって設計された建物は、それぞれの建築家により独自の空間が生じています。建築家の持つ感性が異なっているからですが、そんな感性は私たちの中にも存在します。たとえば、たまたま入った喫茶店で、なんか落ち着くじゃないと思ったり、なんだか居心地が悪いなあと感じたことはありませんか。それがその人の持つ空間に対する感性なのではないでしょうか。ちなみに感性ということを辞書で調べてみました。『1、刺激に応じて感覚をひきおこす働き 2、何かに接して、何ほどかの印象をもつ能力』ということです。

 HPのアンケートに寄せられたご意見の中に、「建築後の御家族の家に対して感じていることなどを聞かせて欲しい」というものがありました。早速、以前お客様からいただいたお手紙やはがきをもう一度とり出して読んでみました。『快適にすごしています』、『気持ちのよい家です』、『この居心地の良さは何なのでしょうか』等嬉しくなるような文面が並んでいて、皆さん心地のよい空間を手に入れたことに満足しているようでした。皆さんの感性と所長の感性がうまく合っているのでしよう。モデルハウスをはじめいろいろな住宅を見学し、五感で感じてみて、この家は居心地がいいなあ、いい感じだなあと思える住宅に出会えたらきっと住み続けていけばいくほど、もっともっと心地よくなるのではないでしょうか。自分としっくりいく空間を見つけること、そしてそんな空間を構築してくれる建築家を見つけることって意外と大事だと思います。

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