桜の頃桜が満開に咲き誇るなか、O邸に向かった。縁あって、O御夫妻からお招きを受けたのだ。私は、趣味でピアノを習って、3年余りになる。そのピアノのN先生とO夫妻が古くからの知り合いで、何かの拍子に私たちのことが話題になったらしい。私の主人とO夫妻が探していた人物が、同一人物だったことが判ってお互いに大変驚いたと、その夜先生からお電話をいただいた。 O夫妻が、住宅を新築しようとしていた時期に、ある雑誌に掲載されていた住宅をとても気に入って、設計を頼みたいと考えていた人物が、主人だったというのだ。それがこんなにも近く(同じ町内)に住んでいたなんて。世の中って狭い!! その日は話が弾み、楽しい時間を過ごすことができた。O夫妻の建築に対する興味は、未だ尽きないらしく、主人は質問に楽しそうに答えていた。奥さんの「何もないところから、どうやって空間を作り上げることができるんですか?」との質問に、主人は「訓練ですよ。」なんて惚けたことを言っているので、私が「土地が“こう建ててください”と叫んでいるんですよ。」と横から口をはさんだところ大爆笑となってしまった。私には、『土地を見たときに、家のイメージが自然に沸きあがってくるんだ。』と言っていたのだ。そのとき、『この人は天才かもしれない。』って密かに思ったりした。(親ばかならぬ妻ばかかな) 以前、私が「お客様の家ばかり設計してないで、自邸の設計もしてみてよ。」と言ったことがある。主人は「土地を見なければ設計なんてできないよ。」と冷たい返事。「ふ〜ん ケチ。いいじゃない。大体土地が50坪ぐらいで、ぬれ縁があって坪庭もほしいなあ。」と言ったら、しぶしぶ付き合ってくれたが、今思うと非常に申し訳ないことをしたと思う。事務所のホームページを作成することになり、主人の住宅が掲載されている雑誌等に、改めて目を通したおかげで、主人の建築に対する想いを少しは理解することができた。家はパズルではないのだ。ただ部屋を配置するだけでは意味がない。様々な要素を考えて(設計作法参照)設計しているんだなあって思い知らされた。 追伸 O夫妻からの質問を参考にしてQ&Aコーナーを新設する予定です。 |
藍杜(あいもり)の家北海道、伊達市に新しい住宅が完成し、先日完成見学会が行われました。取材に来た室蘭民報の記事を紹介します。 『伊達の伝統文化 取り入れた住宅 竹原にお目見え』伊達の伝統文化である刀造りや藍(あい)染めを取り入れた新築住宅が、市内竹原市のプライムヘルシータウンに建った。地元の刀匠・渡辺惟平さん作の軟鋼格子5本を施した天窓、藍染めの和紙を張った内壁、藍色の外壁やポーチ。さらに断熱材は羊毛、ソーラーシステムを取り入れ、道産材を用いるなど“環境の伊達”にマッチした住宅。「藍杜(あいもり)の家」と名付けられたこの家の完成見学会は二十五日から三日間実施される。設計を担当し、「伊達の伝統である藍と刀を住宅に盛り込めないか」と考えた一級建築士の村松篤さん(静岡県浜松市)と、建設を担当した小松建設(本社伊達市錦町)が建主の市内会社員に相談、了解を得た。格子は、渡辺さんが炉で焼いた鉄を金づちで打ち延ばした。刀文を入れる前段の「切刃」と呼ばれる状態になっており、長いもので約九十センチ、短いので約四十センチ。幅は四・五センチ、厚さ一センチ。玄関側の天窓にほぼ十センチ間隔で取り付けられた。藍は、室内の柱や一階八畳間の壁に藍染めの和紙を張ったほか、外壁や玄関ポーチを藍色にした。さらに環境にもこだわり、断熱材はグラスウールでなくすべてオーストラリア産の羊毛にしたほか、ソーラーシステムを設置、道産木材も多用した。(室蘭民報2000年2月23日) この記事の中で少し訂正があります。藍染めの和紙を貼ったのは“室内の柱・一階の八畳間”ではなく、OMダクトと一階の寝室です。 |
新たな飛翔 知り合いのM夫婦が、中華料理の店を始めるということで、主人が内装設計の仕事を頼まれたのが17年前。(まだ結婚前です。) |
あっ 鳥! 『あっ 鳥!近所に最近、新築された民家です。このお宅の奥様に伺ったところ、屋根に積もった雪を隣の土地に落とさないための工夫とのこと。雪国では落ちた雪が車や盆栽などを壊し、お隣さんとのもめ事の種になっているので、グッドアイデアですね。裏の小学校に通う子供たちにも「小鳥のおうち」と評判です。』 |
嬉しい便りお客様からの年賀状の中に、『この家の居心地のよさは何なのか今もわからないのですが、村松さんのふだんからの想いや姿勢と一致しているように思います』と言う言葉があった。それを読んだ主人は、とても嬉しそうに、私にはがきを寄越した。主人は常々、『お客様に心地よい空間を与えたい。そのために村松篤という人間を利用してくれればいいんだ。』ということを言っている。まさに主人の想いが、お客様に届いた証だったのだ。 主人と知り合った頃、よく街中をドライブしたが、彼はいつも家を見ていた。そして、『この街の家は、どれも表情がつまらないな〜。』と言っていた。私は、意味が分からなくて、『この人、なに言ってるんだろう。』ぐらいに思っていたが、そんなある日、主人が設計した家に連れていってもらった。和室に座って坪庭を眺めていると、なんだか気持ちがほっとして、そこから離れがたくず〜っと座っていたいという感覚になった。心地よい空間とはこういうことなのかと少し理解できたような気がした。 |
ならまち、格子の家昨年、紅葉を求めて京都ではなく、奈良に行ってみた。NHKの朝のドラマの影響もあって、明日香村もいいなと思ったからだ。久しぶりの奈良の町、まずは、ならまちを散策することにした。町なかには観光客用にいろんな掲示板があった。なかに、『ならまち、格子の家』というのがあったので、どんなものだろうと行ってみた。予想と違いずいぶん新しい。ならまちの振興のために伝統的な家を再現し建てられたということである 。 のれんを、くぐると吹き抜けになっていて、太い梁がむき出しになっていた。土間は、奥まで続いている。まずは、店の間に上がった。格子越しに外の景色がはっきり見える。外からは内側は見えなかったのに、なんだか不思議な気持ちになった。 中の間、奥の間に続いて中庭が広がっている。庭の木が色づいてとても奇麗だ。中庭からは、光が射し込み、風が流れていく。きっと雨の日には、雨の音に聞き耳をたてたことだろう。そうやって季節の移ろいを感じていたなんて、うらやましい。 庭の横の渡り廊下を通って離れにいくとプライベートの空間を確保することができる。狭く長い土地を効率よくそして贅沢に使っていると思った。当時の家主の住居に対する意識の高さを感じた。 現代も、日本には狭い土地が多い。というか、経済的事情もあって狭くなってしまうと言った方がいいかもしれない。先人達の知恵がうまく生かされていったらいいなと思う。 |
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