ただいま勉強中 昨年、住宅が完成し、オープンハウスを開催することになったので、私も手伝いに出かけた。主に、同業者をお招きしてのものだったので、対応はスタッフがしていたが、私にも何人かの人が質問を投げかけてきた。私は張り切って参加した割には、何の予備知識もなく、ただあたふたしてしまうだけだった。何のための手伝いだったんだろう。う〜ん、不甲斐ない。やっぱり建築の勉強をしなければという気持ちがひしひしと湧いてきたので、ただいま勉強中である。といっても難しい建築の本を読んだところで眠くなってしまうだけなので、主人の話を聴いたりして、生の勉強をしている。
そんな訳で最近では、主人と一緒に打合せにも顔を出す。やっぱり家を新築するという事は、人生における大きな出来事のひとつであるから、お客さんの気合の入れ方が違う。あっという間に時間が過ぎていく。取り留めのない話が続き、特に何も決まらない時もあるが、『その雑談が大事なんだよ。』と主人は言う。そのためか、お客さんのなかには、打合せのあと『精神科のカウンセラーを受けるよりも、村松さんと話した方がいい。』と言ってくださる方もいる。スタッフにも、『所長はまるでカウンセラーのようですね。』と言われていた。 主人は、基本プランを提案するまでお客様と徹底的に話し合いの機会をもつ。住宅に対する要望、考え方はもちろん普段の暮らし方、仕事のこと、趣味、そしてお客さんの生い立ちにまで話が及ぶ事もある。その人(家族)にとって一番過ごし易い空間・心地よい空間を提案するためには、話し合いを重ね、お客さんの内面を引き出す必要があるようだ。そうして何を求めているかを理解したうえでないと設計はできないらしい。聴いていると、すご〜く面倒くさい。好きでなければやっていられない仕事だ。『もっと適当でいいじゃん』なんて大雑把な私は思ってしまうが、そこは頑固職人、その考えは揺るがない。 そうやって練り上げた基本プランをテーブルに広げた時の、お客さんの驚いた顔を見たり、『やっぱり村松さんに頼んでよかった。』という言葉を聴くととても嬉しそうである。主人は、その瞬間のために頑張っている、結構単純な人間なのかもしれない。 |
それぞれの旅立ち 先月スタッフの結婚式があった。祝辞を述べなければならない主人は、数日前から胃の調子が悪く、胃薬と一緒に結婚式のスピーチ集を買ってくると言うので、「スピーチ集の文句なんて、“3つの袋”とか書いてあって、皆な言っているからつまらないよ。そんなの私聞きたくないなあ」っていったら、少々困っていた。「やっぱり皆が興味がある事、聴いてみたい事を話した方がいいんじゃない。」って言ってみたら、「それじゃあ出会いのことを話そう」という事になった。
彼との出会いはメールだった。ある日突然、「村松さんの建築に興味があります」というメールが届いたのだ。事務所に来てもらうと、その日は建築談議に大いに盛り上がった。 数日後、「村松さんの事務所で働きたい。」というメールが届いたが、主人はちょうど出張していてすぐに返事を書くことができなかった。後でその時の事を本人に聞いたら、「駄目なのかなあ」ってドキドキして待っていたという。再び事務所を訪ねてくれた彼は、「僕は設計の職人になりたいんだ」と眼をキラキラさせていた。 そんな事務所で働くようになった経緯と、シドニーオリンピックの日本対ブラジル戦で興奮していたエピソードを交えて、冷静そうに見えるけれど、本当は熱いものが流れている彼自身の事を短くまとめ落ち着いて話していた。様に見えたが、実際はマイクが震えてしまうので、両手でしっかりと押さえていたらしい。なぜか私もドキドキしていた。 そんな彼は、今新婚旅行中であるが、3年間の修行期間(?)を終え、N君は和歌山に帰っていった。D社の社長さんが、主人の建築をとても理解してくれていて、息子さんのことを前々から頼まれていたので、N君は大学を卒業すると同時に事務所で働くことになったのだ。当初は学生気分が抜けず、遅刻も多くて、大丈夫かなって心配したものだったが、3年間でみるみるたくましくなり、今では事務所にはなくてはならないスタッフの一人になっていた。7代目の社長を目指し、頑張ってほしい。 別れがあれば、出会いもあった。新しいスタッフが入ったのだ。子供の頃から、設計士になるのが夢だったというYさんだ。今まで現場監理の仕事をしていたが、やっぱり設計の仕事をしたいということで、スタッフ募集に応募してきてくれた。図面を書くのが大好きだという。それも手書きの図面が・・・。面接の時に持ってきた図面を見た主人は「図面を書くのが好きでしょう。図面を見れば分かるよ」って言っていた。頑張って夢を実現させて欲しい。 |
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