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村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

お問い合わせはTEL.053-478-0538

〒432-8002 静岡県浜松市中区富塚町1933-1

設計コンセプト

1、最初に土地を見たとき、うるおいのある風景をとりもどそうと考えた

 以前はのどかな田んぼの風景がどこまでも続くこの町を、いつの間にか無秩序な建物の群れが埋めつくしてしまった。なかでも幹線道路沿いは、目を覆いたくなる光景が続いている。ならば、この土地だけでも緑におおわれたうるおいのある場にしたい。昔どこかで見た板張りの木造校舎のような、馴染み深いものをつくりたいと思った。
桜色に染められた塗壁が、時間の経過によって表情を変えていく。何故か心和むものがあるように思う。そして、それらすべてのものが木々の緑につつまれた時はじめて、うるおいのある風景をつくりだすのではないかと考えた。

2、テーマは「癒しの森」

 内外とも森の中にいる雰囲気を感じてもらえるよう考えた。
木造の診療所は、木の持つ温もりによって、私達を心身ともに癒してくれるのではないだろうか。そんな木造空間の中央通路上部の天窓からは木漏れ日が射し込み、待合の窓の向こう側には緑が広がっている。
仕上げについても、自然素材にこだわった。床は天然素材のリノリウム、壁・天井は木質系の材料や調湿性が高く、空気中の汚れや臭いを吸着・分解する塗壁(光触媒入り珪藻土)を採用している。

3、何故、平屋建てなのか?

 建築は、土地に固着する以上、最大限にそのポテンシャル(潜在能力)を引き出さなければならない。さらにその周辺環境や歴史・風土・地味までをも読み込んだ設計を可能な限りチャレンジできればと考えている。
振り返ればこの診療所の場合、土地が「平屋建てにせよ!」と叫んでいたように思う。400坪という広さに加え、水平方向にのびていようなこの土地の能力が、もう初めから「平屋建て」を選択していたように思う。もちろん、単独の診療所という設計要件からも水平移動のみの方が望ましいだろうと考えた。バリアフリーという視点からも然りである。つまり、「平屋建て」になるべき条件が整っていたのだ。

4、待合を2つに分ける意味

産婦人科は・特殊な病院である。なぜなら、健康な人も、病に悩んでいる人も、診察にやってくる。そこで、産科・婦人科の待合を2つに分けることにした。これは診療所を訪れてくる患者さんの心情に配慮したもので、クライアントからの強い要望のひとつでもあった。妊娠したお母さんが連れてくる元気な子供さんは、病の人にとっては、心身共に大きな負担になる。そこから発生されるであろう音や感情の高まりを少しでもやわらげる目的で、玄関・風除室を間に挟んでいる。こうすることでそれぞれの待合は独立した空間を共有することになる。また、受付側からは広角に隅々まで見通せる配置が可能になっている。

5、診察ゾーンは明るく、空が見える空間に

 待合室から診察室に入ろうとする時、誰もが不安な気持ちになるだろう。それならば、少しでも心が和むような心地のいい空間で、順番を待ちたいものだ。この診療所の待合の窓から見える緑の木々は目に優しく、外観から想像はつかないが、自然光が降り注いでいて、とても明るい空間が広がっている。

また、画家のアトリエは安定した光を空間に取り込もうとするため、北側の高い位置に窓を設けるケースが多い。医師は画家と同じという訳ではないが、最近の医療機器のみならず、パソコンの画面等は安定した間接光の方が見やすいように思う。また、患者側の心理として少しでも高窓から空が見えたら気分も晴れるかなと考えてみた。この高窓の下はスタッフ専用通路となっているが、ここを吹き抜けにしたのは、働く人も気持ちよく働いてもらえのではないかと勝手に思った次第である。

6、手触り感を大切に

この診療所は先にも述べたとおり木造である。日本人は木の文化で育っているから、木造が好きだという話をよく耳にする。木造という木材で組まれた構造体のみならず、木の床、板張りの壁や天井といった木質の仕上げまでもが多く好まれる。これは木の持つ香り・色・表情等が日本人の感性によく合うからだと思われるが、私は温もりや優しさを手で触ることを通しても感じられればと考えている。風除室ガラス戸のまゆ型引手・木製のカウンター・木製サッシ・木製の家具・室内金具の木製引手・トイレの木製手すり等々、人の手に触れる箇所の多くをあえて木製としているのもそれらの考えによるものだ。

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