設計コンセプト1、最初に土地を見たとき、うるおいのある風景をとりもどそうと考えた ![]() 以前はのどかな田んぼの風景がどこまでも続くこの町を、いつの間にか無秩序な建物の群れが埋めつくしてしまった。なかでも幹線道路沿いは、目を覆いたくなる光景が続いている。ならば、この土地だけでも緑におおわれたうるおいのある場にしたい。昔どこかで見た板張りの木造校舎のような、馴染み深いものをつくりたいと思った。 2、テーマは「癒しの森」 内外とも森の中にいる雰囲気を感じてもらえるよう考えた。 3、何故、平屋建てなのか?
建築は、土地に固着する以上、最大限にそのポテンシャル(潜在能力)を引き出さなければならない。さらにその周辺環境や歴史・風土・地味までをも読み込んだ設計を可能な限りチャレンジできればと考えている。 4、待合を2つに分ける意味 産婦人科は・特殊な病院である。なぜなら、健康な人も、病に悩んでいる人も、診察にやってくる。そこで、産科・婦人科の待合を2つに分けることにした。これは診療所を訪れてくる患者さんの心情に配慮したもので、クライアントからの強い要望のひとつでもあった。妊娠したお母さんが連れてくる元気な子供さんは、病の人にとっては、心身共に大きな負担になる。そこから発生されるであろう音や感情の高まりを少しでもやわらげる目的で、玄関・風除室を間に挟んでいる。こうすることでそれぞれの待合は独立した空間を共有することになる。また、受付側からは広角に隅々まで見通せる配置が可能になっている。 また、画家のアトリエは安定した光を空間に取り込もうとするため、北側の高い位置に窓を設けるケースが多い。医師は画家と同じという訳ではないが、最近の医療機器のみならず、パソコンの画面等は安定した間接光の方が見やすいように思う。また、患者側の心理として少しでも高窓から空が見えたら気分も晴れるかなと考えてみた。この高窓の下はスタッフ専用通路となっているが、ここを吹き抜けにしたのは、働く人も気持ちよく働いてもらえのではないかと勝手に思った次第である。 6、手触り感を大切に この診療所は先にも述べたとおり木造である。日本人は木の文化で育っているから、木造が好きだという話をよく耳にする。木造という木材で組まれた構造体のみならず、木の床、板張りの壁や天井といった木質の仕上げまでもが多く好まれる。これは木の持つ香り・色・表情等が日本人の感性によく合うからだと思われるが、私は温もりや優しさを手で触ることを通しても感じられればと考えている。風除室ガラス戸のまゆ型引手・木製のカウンター・木製サッシ・木製の家具・室内金具の木製引手・トイレの木製手すり等々、人の手に触れる箇所の多くをあえて木製としているのもそれらの考えによるものだ。 |
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