旅は風まかせ、その日の気分次第で予定を変えてとはよくいったもので、早くもその予定が急きょ変更になってしまった。建築に携わる人間は酒好きが多いことは、つとに有名な話だが、このツアーの御一行様も期待通り(?)の酒飲みも手伝ってか、ボルドーでの初日はワイナリー見学でスタートを切った。だが、私も含めて数人の参加者は、元来アルコールと相性が悪かったり、少々体調をくずしたりとの理由でこれには行かず、それぞれ思いのままフリータイムを過ごすことにした。 ![]() ![]() そのあと、晩秋の趣きを漂わせるボルドーの古い町並みをそぞろ歩く。石造りのアパートメントがスカイラインを揃えて立ち並ぶ美しい景観は、ヨーロッパの歴史と文化を感ぜずにはいられない。時が経つのを忘れてその場に身をゆだねた。
![]() ![]() どんな部屋なのか不安半分でいそいそと部屋に向かう。狭くて暗い階段を3階まで上がり、部屋の扉を開けた。第一声は、ウォーだったか、ブラボーだったか記憶が定かではないが、間違いなく感嘆の声をあげたのは確かである。20帖ぐらいの広さににダブルベッドが真ん中に1台置かれ、ベットに寝そべったアイレベルからはちょうど窓の向こうにガ ![]() だが、圧巻は40帖ぐらいはあっただろうか、外のウッドデッキ。ここには何とジャグジーバスが1台、いつでもスタンバイOKの状態で湯温が調節されている。うしろにはライトアップされた教会の尖塔がそびえ建ち、前はもちろんボルドーの夜景とくれば、もう入るしかないと思ったらなんと建築探険隊の乱入ではないか。いつの間にかそこは時間無制限、交代制の宴会場となり、深夜遅くまで宴は続くのであった。
食通をもうならすという高級ホテルをあとにした我々は、ボルドーの市内へと再び足を運んだ。たおやかな流れのガロンヌ川を渡ると、都会的な空気が徐々に迫ってくるのがわかる。町の賑わいが顔を見せはじめたその時、周囲とはあきらかに違う形態のものが目に飛びこんできた。車の往来が激しい通りに面した建築物は全面ガラス張りで、中にはキノコの傘のような形をしたものがいくつも宙に浮いているかのように見えた。よくみるとその物体はコンクリートの柱で支えられ、内部には鉄製のアプローチ階段が掛けられている。キノコの外装は板張りなので、特異な形状の割には何やらホッとする気持ちになれる。それは自分が日本人からなのであろうか。 ![]() 地元の人が声を掛けてきた。カメラ片手に著名建築家の仕事をつぶさに見ていたら、「あなたはこれをどう思うかね?」何と答えていいのか困っていたら、「私はクレイジーだと思うがね。」と一言。一市民の声が聞けたのはとてもラッキーだったが、こうした新しい建築に対して意見が申せるのは、やはり文化の違いなのだろうか。
旅は道づれとはよくいったもので、同じツアー参加者の希望で少し寄り道をすることになった。ボルドーからあのブローチ等の焼き物で有名なリモージュへ向かう途中、多分日本人は訪れることがないだろう、ペリグーという山岳都市へと足を伸ばした。参加者の中で最年長のT氏は、ロマネスク建築にとても明るい方である。このペリグーというまちには南仏最大のロマネスク教会があるので、ここまで来たからには是非寄りたい、いや寄って行くべきだと強く主張した。この寄り道が、今回の駆け足の旅に、益々の拍車をかける事になったのだ。 とにかく時間が超タイトであるために(予定にはない寄り道をしたため)、確かこの時はまちの中心にバスを停めて添乗員がこう叫んだ。「教会はあの小高い丘の上にあります。今から食事とトイレを済ませて、一時間後にもう一度ここへ集まってください。それでは、解散。」外国へ旅をされた方はもうお分かりのことだと思うが、レストランに入ってきっちり食事をしょうものなら、とうに1時間では間に合わないのは百も承知である。皆暗黙の了解でいそいそと坂をかけ上がり、教会(サン・フロン大聖堂)に着いたらまずは一休み。美しいまちをここから見下ろせば、足の疲れも少しはやわらぐ。なかなかいい石造りの建築を見学したら、今度は一気にかけ下りる。通り沿いの小さなパン屋で残り少ないパンを買い、先ほどの集合場所へ、何ともあわただしい旅ではあるが、これ皆建築バカだから出来るは早技か?まだまだ旅は続く、続く・・・・・・。 |
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