☆この曲はの一之瀬さんの『海ゆえに』という曲です。 |
住宅と感性!静岡県弁護士会では、住宅紛争に関する相談の窓口があり、弁護士と建築士が相談者の対応をしている。所長は所属団体からの要請を受けて、第三者の立場で建築についての意見を述べているようだが、守秘義務があるので私は詳しいことは知らない。ただ、施主の立場になって考えると、せっかく新築した家に気持ち良く住めないなんて悲しい。相談や調停をしないまでも、新居に満足していないという話は時々耳にする。ある床屋の店主は、「前の家の方が住み易かった。やっぱり家は3度建てないと満足しないのかな」と呟いていた。よくよく話を聞くと、設計者とは一度しか打合せをしていないようだ。それはあまりにもコミュニケーション不足ではないのか。所長は設計する上で、建て主やその家族を知るということをとても大切にしている。所長が尊敬する建築家、吉村順三さんの、 「建築家として、もっともうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活が行われているのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか」 この言葉の中にある、いい生活や楽しそうな生活は建て主や家族の事を理解していなければ分からない。吉村さんが打合せの中で感じた家族の感性を大事にして設計をしていた証ではないだろうか。この言葉は所長の胸にずっと刻まれている。 「雨・露をしのげる家を・・・」と抽象的で難解な要求する建て主もいた。所長はその意味を探るために京都の河井寛次郎記念館まで足を運んだ。そして建てられたのが、“まちの語りべになる家”だ。高低差のある変形敷地に建つ白壁の家は、新築時から古びた民家の風情を漂わせていた。玄関までのアプローチもとても趣きがある。玄関に一歩足を踏み入れると、何故か郷愁に誘われた。日本人としてのDNAに語りかけてくるような家だった。この家は人気があり、見学希望が多い。やはり皆さんも私のように何か感じるものがあるのだろうか?35年の月日を経てますます趣きを増していた家だが、ちょっとガタもきてしまい、今年、改修の仕事を頼まれた。 建て主のIさんから、「村松チャンは空間が分かるんだねぇ。空間の魔術師だねー」と言われたと、所長は照れながらも満更でもない様子だった。 仕事の一線から退いたIさんは、家で過ごす時間が増えて、より感性が高まったのかな? 「村松さんの設計した家に住んでとても気に入っている。この雰囲気を壊したくない」と連絡をくれたのが、30年前に設計した住宅に住むTさん。 この住宅は、方位が45度振れている特殊なプランで、難易度が高かったのでよく覚えている。今回、娘さんご家族と一緒に暮らすための増改築の依頼だった。 「お久しぶりです。村松さんは変わっていませんね」と挨拶した娘さんは、当時、小学生。そんな少女が、いきなり成長した女性となっての再会に、「一瞬、タイムスリップしたような不思議な気分になった」と感慨深げだった。私はなにより、ご家族が所長の設計した家を気に入って暮らしてくれたのがとても嬉しい。 |
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