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村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

お問い合わせはTEL.053-478-0538

〒432-8002 静岡県浜松市中区富塚町1933-1

 浜松・AKANEHOUSE
 
 
   <AKANEHOUSEを訪問して>
  神社脇の坂道は急勾配で、息を切らしながら登っていくと、とても窮屈そうな住宅地が展開されていた。そんなひしめき合う住宅の中にあって、AKANE HOUSEは悠然と佇んでいた。家の前には植栽が設けられ、1台分の駐車スペースまで有る。確か敷地は20坪のはずだ。
延べ床面積18坪の小さな家は、玄関から各部屋が階段によってスムーズに繋がれてゆとりすら感じ、吹抜が光や風の流れをもたらしていた。

 リビングに案内され、ソファーに座る。目の前に広がる神社の木々の緑がまぶしかった。8月の暑さもたけなわというのに、建主は窓を開放しただけで平気な顔をしていた。「この夏はまだ1回しかエアコンを付けていないのよ」建替え前の家の夏は暑く廊下で寝たこともあったというが、建主はこの暮らしの変化を享受しているようだ。(村松利枝子)
  

設計コンセプト

  その敷地は、起伏のある造成地でひしめき合うように家が建ち並んでいる。決して広くはないが、道路の反対側には神社の森が間近に迫っている。傾斜地の高台にあるため、まちの景色を独り占めできる立地でもある。

 建主と愛猫が長年暮らし、馴染んできた土地の家に射し込む光や風の通り道、居心地の良い場所等々は、その場に身を置き打合せをすることで理解を深めていった。時には趣味の話で盛り上がった。音楽に関しては、ピアニストの奏でる音の好みや音楽ホールの良し悪しにまで話が及んだ。また、お互いの愛猫の仕草や行動についての話だったり、芝居や落語、能や歌舞伎の話だったりと、話題は尽きなかった。そんな雑談の中に設計のヒントが隠れていた。
 
 ある時、「赤が好き」とポツリと言った言葉は、闇から光へと移りゆく夜明け前に茜色に染まる空を、そしてそんな風景の中に佇む家のシルエットを思い浮かばせた。森の緑からバトンを受け継ぐように空地には植栽を施し、道路に面した場所には木々の間をすり抜けるようなアプローチを設けてみよう。

  神社の森と高台でのロケーションを活かしたプランは、容易に想像できた。道路に面した北側には玄関や水回りのサブゾーン、森に面した南側には居住空間のメインゾーンを配するように考えた。しかしながら、思った以上の敷地の狭さと奥行きの無さに頭を悩ませた。限られた空間を有効に使うためのポジションを徹底的にシミュレーションし、ひとつの空間でありながら適度な目隠しのあるプランが完成した。

 ソファでくつろぐ傍らには畳の上で愛猫が日向ぼっこをし、音楽に耳を傾けながら二人とも森の緑を眺めている。食卓脇の出窓にはお気に入りの置物が置かれ、吹抜の窓から降り注ぐ太陽の光に包まれるなか、愛猫はキャットウォークから建主の様子を伺っている。寝室から繋がる階段や吹抜は一体の空間で、光や風の動きが手に取るように分かる仕掛けだ。小さな宝石箱のような家は、魅力的な要素が一杯詰まっている。(文:村松)
     
玄関(上)、 リビング(下) リビング
DK 寝室 

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