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村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

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〒432-8002 静岡県浜松市中区富塚町1933-1

 浜松・彩庵

設計コンセプト

 幹線道路から少し入った閑静な住宅地の中に、その土地はある。敷地は東西方向に長く、しかも十分な広さがあり、2方道路の角地とあって申し分ない。周辺には緑が多く、日当たりは良好で、1年を通して適度な風が吹く、いわば理想的な環境だ。そんな中でも、年中発生する蚊や虫による被害、遠州特有のからっ風(冬の西風)には頭を悩ませてしまう。

 建築(住まい)は土地に固着している以上、それに逆らうことは出来ない。自然エネルギーや周辺環境、土地の形状や大きさ、接道状況やアプローチの取り方等によって、大きく左右されるのが建築である。自分が思い描く在るべき姿に住まい手の要望を重ね合わせ、取捨選択を繰り返し行った後、ようやくひとつの解にたどり着く。さらに、自分の答えが間違っていないのかを確かめるように、描いた図の中に入り込んで暮らしのシミュレーションを行ってみたりする。多少の手直しを経た後、ひとつの新しい建築が誕生する瞬間だ。

 私はここに、水平ラインを意識した美しい家を創ろうと思った。存在感のある大きな屋根、低いプロポーション、豊かな表情を持つ外観、材の特性を活かした仕上げが重なり合い、いつまでも愛され続けるような民家を。東西方向に長い敷地形状に合わせた基本形態に下屋をL 型に配し、東側には特徴的なデッキとバルコニー、北側にはオーヴァーハングした部分を設けて、飽きの来ないデザインとした。外でもなければ内でもない軒内空間や、日射をコントロールする仕掛けを設けることで暮らしやすい家を追及している。

 現代社会が抱えるドライな人間関係を映し出すように、住宅の世界も無味乾燥なデザインのものが数多く見受けられるようになった。外観は凹凸がなく、屋根の出は小さい。窓の上には庇がなく、代わりにシャッターボックスが取り付いている。なるべく家に対して手を掛けたくない表れだとすれば、それは大きな間違いである。なぜなら日本のように雨の多い国は、家をすっぽりと覆う確かな屋根が必要不可欠であるからだ。外壁材やサッシュ(ガラス)自体にその負担を掛けるという考え方は、相当なリスクを伴う。時折発生する台風や突風、竜巻等の自然災害から家を守るということも決して忘れてはならない。

 家の品位は、そこから醸し出す雰囲気に表れる。それは決して一律ではないが、見るものの心が揺さぶられる。適度な緊張感、計算された寸法、心地良い空間が相まって成立する不思議な感覚。格子が彩る光と影≠ェこの家の品位を確かなものにしているように思う。日常の暮らしを紡ぎながら、住まい手によってさらに彩を加えていくことを、私は期待している。(村松篤)

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