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村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

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〒432-8002 静岡県浜松市中区富塚町1933-1

浜松・伎倍の森

設計コンセプト

ほぼ正方形に近い敷地が東西・南北ともに2区画並んだ計4区画のうち、Tさんの家は北西角の位置にある。ここから一望できる東側区画の先の田園風景は、幼少の頃に遊んでいた楽しい記憶が蘇るようで、とても懐かしい。 またそこを吹き渡ってくる風がすこぶる爽やかなことは、体に染み付いていて、心地いいことを私自身知り尽くしている。

新興住宅地に建ち並ぶ住宅の多くは、とてもアンバランスだ。敷地に比べて家が大きく、息が詰まるような印象を受けてしまうからだ。それはまるで新聞に折り込まれるスーパーのチラシのようで、紙面一杯に盛り沢山の内容 が押し込まれ余白が全く無い。見ている者を疲れさせてしまうのだ。それでもごく稀に、ゆったりとしたバランスのいいチラシを見る時がある。そこには必ず適度な余白が存在する。この余白こそが、家の設計即ち町を形成する上で大切なポイントであると言うことを、案外理解していないのではないだろうか。

昔の日本人には節度があり、そのバランスを図ることで美学が生まれた。建築に例えるならば、家の高さを押さえ、屋根を深く張り出し、通りに面した窓は上手く視線を遮り、控えめなデザインで町並みをつくっていた。それがいつの間にか、多国籍のデザインで彩られたような家が蔓延るようになり、町は一変した。旅先では、日本人の多くが積極的に古い民家を訪ねて当時の暮らしを満喫したりするものの、自分たちが暮らす家となった途端に、自分勝手なルールを適用するのはいかがなものだろう?

その町にとって、ほっと安らぎを与えてくれるような家とは。家の品格を問い質してくれるような、さりげなく主張する家とは。家の中では、どんな暮らしがなされているのだろうと想わせる家とは。
 私は、一石を投じたいと思った。家の本質はどうあるべきかを。どこにでもある一般の住宅地の中で、通りすがりに思わず振り向いてしまうような慎ましいデザインの家が、あってもいいのではないか。隣家への日照や通風に配慮した家の形状と配置。周辺環境を読み込んだプランニング。
訪れるものを優しく迎え入れる設え。これらすべては、完成を待たなければ伝わりにくいのかもしれない。いや、暮らし始めてからになるのだろうか。その評価は、町の住人に委ねられている。(文 村松篤)

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