村松篤設計事務所は、静岡県の西部、浜松市にあります。

長い時間を掛けて、手間を惜しまず、大切に育てられた庭の木々。 風雪に耐えながら、時を刻みつづけた、古美の味わいを持つ日本家屋 　この場に、違和感なく溶け込むような慎ましい家を、私は置こうと思った。

光や風、雨や雪、花や緑、鳥や虫など、あらゆる自然を感じる家を。時には人や空気の気配を感じ、自然のエネルギーを受けとめることのできる家を さりげない表情に心が落ち着き、思わず豊かな気持ちになれる拠りどころ（家）を。

素の美しさ、場の在り方、材や形の選択等々は、それぞれ意味を持っている。建築は言葉では語ってくれないが、必ずや訴えかけてくるものである。

その醍醐味を少しでも味わっていただけるものが、出来たように思う。新しい家に移り住んだとき、「お父さんお母さん、僕（私）はこの家にずっと前から住んでいるような気がする。」と、言われる声が聞こえてくることを、設計者としては願うばかりである。（文　村松篤）