名古屋・曽根の家 |
設計コンセプト |
成熟した町並みの一画に新しい風を吹き込む時、いつも不安と挑戦の気持ちが交錯したような緊張感に襲われる。新居が建つことで落ち着いた雰囲気の家並みを崩しはしないだろうか、周辺環境に悪影響を及ばしはしないだろうかといったことが、いつも心の奥底で気に掛かる。ただ、これから先どのように変化していくか見通しが付きにくい新興住宅地とは違い、少なくとも周囲の状況が定まっている場に入り込んでいく場合は何らかのきっかけがある分、そのヒントを頼りにプランニングを進めていけるメリットはありそうだ。 敷地は北西の角地で約61坪の大きさと聞き大変恵まれている条件かと思いきや、南と東に隣家が立ちはだかり、日照に影響を及ぼすことが予想された。救いなのは、南側の東端方向への抜けと東側隣家の庭がちらちら見えるぐらいだろうか。駐車スペースはMAXで3台、これに家庭菜園とサービスヤードを敷地内に配していくのは容易ではなかったが、効率的にゾーニングをすることでひとつのプランが生まれた。 広いリビングを中心に展開するプランは、水平・垂直方向に空間を繋げることにより開放性(広さ)を強調し、吹抜上部からは自然光が降り注ぐとともに風が通り抜ける。こうした主要空間を安定した温熱環境に保つもうひとつの要因として、北側に広い玄関をバッファーゾーン(熱と音の緩衝空間)として配していることが挙げられる。裏庭へ視線を抜くことで、北側とは思えないほど明るく気持ち良い空間が体感できるだろう。ロフトから繋がる屋外バルコニーは、物見台の気持ちよさだけではなく、光と風の通り道としても重要な役割を果たしてくれるはずだ。積極的な自然エネルギー利用として、雨水タンクとソーラーベント(空気集熱式換気システム)を採用した。自然の恵みである雨と太陽を享受することが、何よりの喜びとして感じられることだろう。 この家は、準防火地域内の住宅地における「超長期仕様のBio森の家」のひとつとして提案できたのではないかと思う。これから先、曽根の町並みに溶け込んでくれることを期待している。 (文 村松篤) |
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